記録屋日記 -Next‐

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思い出の名場面 (3)

【3】東中国大会…防御率0.00での制覇
 4年ぶりの東中国大会切符を掴み、悲願の全国大会へ一歩近づいた新見。軟式野球部員は、東中国大会へ向けて練習を重ねていた。

 そんな中で、新見高校には嬉しいニュースが、いや、新見市民にとっても嬉しいニュースが飛び込んでくる。男子ソフトボール部が夏の全国高校総体で優勝、春夏連覇を成し遂げたというのだ。1年で2度の全国制覇という「偉業」に、新見市民は沸き上がった。…そして軟式野球部員は、このニュースを聞いて、ソフト部には負けじと、燃えた。

 しかし、全国大会へ最後の関門となる東中国を前に、新見はピンチに追い込まれていた。ここまで岡山大会3試合で3連続登板、エースとして大車輪の活躍をしてきた矢吹が、疲労からか肩の違和感を訴え、投球ができない状態になっていたのである。ここまでの3試合、矢吹の活躍なくして勝利は有り得なかっただけに、チーム内には「矢吹離脱」という不安要素ができてしまう。

 誰が投げるのだろうか…矢吹を除き、メンバー登録されているのは守脇、林、元家の3人。岡山大会で3試合、好リリーフを見せた守脇か、左腕としてここまで実績十分の林か、はたまた変則投法の元家か…この3人のうち、首脳陣が選んだカードは3人目、「一番流れを作れる投手」元家だった。

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 8月3日、岡山での東中国大会開幕前日、岡山商大付属高校での練習後、「着替えていたら『先発だ』、と」いう通告を受け、元家の先発登板が決まる。同日、午後3時には、主将・千原が出席した抽選会が終了し、「1回戦は第2試合、八頭」の発表が行われる。

 翌、8月4日。岡山県営球場を舞台に、全国切符をかけた東中国大会が幕を開ける。その第2試合に登場した新見は、鳥取代表・春季中国大会準優勝の八頭を相手に、先手先手に試合の流れを作る。3回裏、一死満塁から3番・森口がエンドランを決め先制。5回裏には相手の失策と、5番・赤木がやはりエンドランで2点を追加し、3対0。新見の先発・元家は立ち上がりから毎回走者を背負うが、そのピンチでも新見は、持ち味である堅い守りを遺憾なく発揮する。

 8回表、元家が3四死球と突如乱れ、二死満塁の大ピンチ。そして打席には4番。その2球目を「カキーン!!!!」…火の出るような猛ライナーが一塁線を襲う。…が、この猛ライナーを一塁・槙原が逆を突かれながら執念で弾き落とす。一瞬、打球を見失いながらもその打球を見つけ、最後は打者と競争に…グラブをはめたその左手で、執念のベースタッチ。塁審は「アウト!!」と絶叫した。

 大ピンチをしのいだ元家はこの回で「お役御免」になり、9回は守脇が行く予定だった。…しかし新見はその裏、槙原の2点適時打、渡辺の適時打、田辺のスクイズで一挙に4点を奪う。気づけば7対0で8回コールド、試合は終わっていた。

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 そして準決勝・矢掛戦は、この大会で最も苦しい戦いとなる。

 矢掛の先発は、予想通りエース谷口。新見先発は元家。共に1回戦は完封で準決勝に上がってきた。スライダー2種類を駆使して、1回戦で大社佐田を手玉に取っていた谷口をどう崩すのか…新見が勝つためのポイントはそこにあった。

 しかし新見は、前日のビデオから、徹底した「外攻め」に走っている…という矢掛バッテリーの配球を分析し、ベース寄りに立ってインコースをつぶし、アウトコースをを狙う…という苦肉の策を立てる。その作戦に忠実に、気迫で投げてくる谷口に対し、気迫で襲いかかる新見は、4回表、森口、赤木の安打などで一死満塁とすると、千原達の遊ゴロで1点を取り、ついに先取点を奪う。

 その後も追加点を取りに谷口に食らいつく新見打線。だが谷口の前に手も足も出ない…というイニングが続く。一方で、元家も毎回走者を出しながら、自らの持ち味を発揮して矢掛打線を封じ、必死に矢掛を振り切る。7回には一死三塁の大ピンチに直面しながらも踏ん張った。追われる新見と、追う矢掛。忍び寄る影を新見は必死に振り払いながら、8回まで1対0を「何とか」保つ。

 だが9回表、二死二塁からであった。ここまでその打棒を潜めてきた1番・渡辺が、ついに谷口を打ち砕いた。甘く入ったスライダーを一閃、左中間を破る猛ライナーの間に、二走・槙原が本塁生還。必死に逃げてきた新見が、ようやく2点目を奪い、ダメ押しした。

 その裏、無死一二塁と再び大ピンチを迎えるが、元家が好守備で三塁を踏ませず、ついに試合は終わる。2対0…矢掛の猛追を、ついに新見が振り切ったのだ。
 
 苦しい戦いを制した新見に、初の「全国」の扉が、「全国」の二文字が、かすかに見え始める。

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 ついに迎えた決勝戦、相手は、因縁の倉敷工。ここまで、県内の主要な大会で幾度となく死闘を演じ、この年の県総体の決勝戦でも対戦した因縁のライバルとの、最終決戦の時が来たのだ。

 倉敷工は、ブラスバンドを含む大応援団を引き連れてやってきた。しかし新見も負けてはいない。3日間の試合で初めて大太鼓が持ち込まれ、スタンドの選手たちが即興の応援歌を作った。もちろんブラスバンドはいないので、その応援歌を奏でるのは選手自身の声。スタンドの選手たちも、最終決戦に向け気合いの入れようが違った。

 「守備でリズムが作れる」後攻を取った新見の先発マウンドには、やはり元家がいた。その元家が倉敷工を抑え、また倉敷工も先発・浦川投手の快投…初回、2回と互いに0点。我慢の試合展開になるか…という予感がした、その矢先の3回裏だった。二死二三塁から、3番・森口が、倉敷工先発・浦川の直球を綺麗にレフトへ運ぶ。塁上2走者が一気に本塁に返り、新見は大きな大きな先取点2点を奪う。

 4回裏には、二死二塁のチャンスを作ると、7番・千原がレフト前へタイムリーを放ち、3点目を奪う。 そして、6回。6番岡崎の三塁打のあと打席に立った8番元家が、レフトへ大飛球。大きな当たりは犠牲フライになり、駄目押しの4点目となる。

 みんなが取ってくれたこの4点を、元家をはじめ守備陣が必死に守る。ひとつアウトをとるごと、ふくらむ期待と、近づく勝利。こつこつと、積み重なっていくアウト。そして、その瞬間は来る。

 「追い込んだ、さぁこれが最後の1球になるのか!?元家、3球目を投げた、…空振りーッ!三振だぁ―!!」

 …その時、歴史が動いた。最後の打者は三振。27個目のアウトを取った直後、マウンド近くに出来上がる歓喜の輪。一体となって応援してきたスタンドも、これ以上ないくらいに沸き上がった。投手元家、3試合連続完封のおまけ付きで、新見、初の全国へ、扉は開かれた。

 そして、倉敷工とのライバル史にも、終止符が打たれる。血の気を通わせ戦った両者は試合後、互いに握手を交わし、さわやかに健闘を称え合ったのである。

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…第52回全国高校軟式野球選手権・東中国大会(岡山県営球場)
▼1回戦:新見×八頭[鳥取]
八 頭|000 000 00 |0
新 見|001 020 04x|7
(8回コールド)
新見)元家―岡崎
二塁打)槙原

▼準決勝:新見×矢掛
新 見|000 100 001|2
矢 掛|000 000 000|0
新見)元家―岡崎
三塁打)渡辺徳

▼決勝:新見×倉敷工
倉敷工|000 000 000|0
新 見|002 101 00X|4
新見)元家―岡崎
三塁打)岡崎
  1. 2008/09/03(水) 22:10:10|
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